大量の情報を仕分けて整理するために分類は古くから用いられてきた手法です。「分類」という言葉をインターネット辞書で調べると「事物をその種類・性質・系統などに従って分けること。同類のものをまとめ、いくつかの集まりに区分すること。(デジタル大辞泉)」とあります。分類とは、全体を共通性に従って何某かの概念で定義付けながら構造的に階層立て、その順序を記号法で表現することです。そもそも、分類なくして効率的な情報マネジメントはできません。
建設業に例えると、構造物を構成するエレメント、構造物を切り分ける部分の概念、仕事のまとまりを表す工事、資材や機材の種類、空間や構造物の用途などの分類が考えられます。
建設情報分類体系を使う理由は何でしょうか。例えば、工事仕様や製品仕様の情報に標準化された分類番号を付けておくと検索がしやすくなります。建設費や資材単価も同様のことが言えるでしょう。つまり、建物を構成する要素に対するメタデータと考えるのがわかりやすいと思います。そのため、BIMの普及に伴って、建設業界でも建物の構成要素を容易に検索するための「分類体系システム」への注目が以前よりも高まっています。
建物をどのような切り口で分類するかについて、いくつかの考え方があります。
米国では部分の切り口である「UniFormat」や工事種別の切り口である「MasterFormat」が広く認知されています。市販のディテール集やコスト情報もUniFormatやMasterFormatの分類で章立てが行われているものが多いです。建設コストデータ「RSMeans data」では、建設コスト情報である「Building Construction Costs」にMasterFormat、アセンブリのコスト情報「Assemblies Costs」にUniFormatの番号を付与しています。建設資材検索サイトの「Sweets」も、掲載している製品をMasterFormatの番号で検索できます。MasterFormatの分類で各種の工事仕様書のひな型や製品の工事仕様書をWebで配信していることもあります。
建設分類システムの国際規格であるISO12006-2は、初版が2001年に制定され、2015年にBIMに対応した改訂が行われました。ISO12005-2:2015が示す枠組みは、様々な概念で建設プロジェクトを分類する「ファセット型」を前提とし、各概念が情報オブジェクトのクラスとして纏められています。ISO12005-2:2015ではテーブルを「Construction result(建設結果)」「Construction process(建設プロセス)」「Construction resource(建設資源)」の3つの視点に大別し、クラス間の関連づけの例が示されています。それらを列記した表を掲載しました。視点とクラスとの関係が「分類(type of)」であるものは標準フォント、その他の関係にあるものは斜体フォントで示しています。
視点 | クラス | 日本語訳 |
---|---|---|
Construction result | ||
(建設結果) | Built space | 建築空間 |
Construction complex | 複合施設 | |
Construction entity | 建造物 | |
Construction element | 建設要素 | |
Work result | 建設結果 | |
Construction process | ||
(建設プロセス) | Pre-design process | 事前設計プロセス |
Design process | 設計プロセス | |
Production process | 生産プロセス | |
Maintenance process | 保守管理プロセス | |
Management | 管理 | |
Construction process lifecycle | 建設プロセスのライフサイクル | |
Construction resource | ||
(建設資源) | Construction product | 建設製品 |
Construction aid | 建設支援 | |
Construction agent | 建設関係者 | |
Construction information | 建設情報 |
各テーブルは、「分類(type of)」や「構成(part of)」の階層で整理されています。分類階層とは、テーブルの属性に基づいて上位クラスをサブクラスに分類することです。構成階層とは、サブクラスの集合が上位クラスを構造的に構成することです。
ISO12005-2:2015では構成に関してシステムをサブシステムに細分化・構造化する考え方としています。また、システムの構成要素を入れ替えたり削除したりしても、システムを定義する概念は変わらないと説明しています。
例えば、レンガを壁システムに追加したり、壁システムから削除しても、全体は壁システムのままです。壁システムは壁構築システムと窓システムで構成され、窓システムはガラスと窓枠で構成されます。窓枠は木製、鋼製、プラスチック製に分類でき、窓枠は木製、鋼製、プラスチック製に分類できます。窓枠のように構成における上位階層の分類の選択に下位階層の分類の選択が影響を受けることもありますし、ガラスのように影響を受けないこともあります。